お盆やお正月に帰省した際、親とのコミュニケーションでイライラしてしまった経験はありませんか。
「昨日も同じ話をしたのに」とつい語気を強めてしまい、後悔するケースは少なくありません。
親が高齢になると、心や体の機能にさまざまな変化が起きます。
私たちが若い頃と同じような感覚で接しようとすると、すれ違いが生じやすくなりますし、孤独感から人間関係のトラブルを抱えやすくなる傾向もあります(内閣府「人々のつながりに関する基礎調査」)
大切なのは、親を「自分とは異なる価値観やスピードで生きる存在」として受け入れ、親のプライドを傷つけないように誘導する会話のコツを身につけることです。
この記事のポイントは以下の4つです。
- 加齢による心身の変化を理解し、親を「別の生き物」として認めること
- 正しい意見よりも、相手の気持ちを優先して対話すること
- 指示や命令ではなく、お願いする形で相手のプライドを守ること
- イライラした時は物理的・心理的に距離を置くこと
なぜ親に響かないのか、高齢者の心理とコミュニケーションの壁
- 何度も同じことを言う理由と脳の変化
- 正論が通じないのはプライドの壁
- 伝わらない原因は言葉ではなく態度の問題
何度も同じことを言う理由と脳の変化
高齢になると、新しいことを記憶したりスムーズに思い出したりする力が少しずつ衰えていきます。
これは病気ではなく、誰にでも起こる自然な変化です。
加齢によって頭の中で処理できる情報量が減るため、一度にたくさんのことを言われても理解しにくくなります(厚生労働省「こころの健康サポートガイド」)。
そのため、親が同じ話を繰り返すのは、忘れてしまったからというよりも、今まさに不安を感じているサインかもしれません。
「さっきも言ったでしょ」と責めるのではなく、親がどのような気持ちでその言葉を繰り返しているのかに思いを巡らせることが、関係を改善する第一歩になります。
正論が通じないのはプライドの壁
親にとって、子供はいつまでたっても子供です。
そのため、子供から正しい意見を言われると、理屈ではわかっていても素直に受け入れられないことがあります。
これは、親としての威厳やプライドが邪魔をしてしまうためです。
長年築き上げてきた自分のやり方や考え方を否定されることは、高齢者にとって大きなストレスになります。
とくに定年退職などを経て役割が減ると、孤独感や虚無感を抱きやすく、ちょっとした否定が怒りや無気力を引き起こす要因になることもあります(厚生労働省 高齢者の心理的特徴)。
正論を振りかざして相手を論破しようとするほど、親は意固地になり、心のシャッターを下ろしてしまいます。
伝わらない原因は言葉ではなく態度の問題
相手に何かを伝えるとき、実は言葉そのものの意味よりも、声のトーンや表情といった言葉以外の部分が大きく影響しています。
話し手が聞き手に与える情報のうち、言葉による情報はごくわずかで、残りの大部分は身振りや態度などの情報だと言われています(非言語コミュニケーション)。
心身の機能が衰えつつある高齢者とのやり取りでは、こういった寄り添う姿勢が非常に重要です。
どんなに親を思って丁寧な口調で話していても、顔が怒っていたり、ため息をついたりしていれば、親はその不満な空気を敏感に察知します。
言葉で説得しようとする前に、まずは自分が穏やかな態度で接しているかを見直すことが欠かせません。
どうすれば伝わるのか、親の自尊心を守る具体的な会話テクニック
- 否定せず「まずは受け止める」技術
- お願いベースで動いてもらう誘導法
- イライラをやり過ごす距離の取り方
否定せず「まずは受け止める」技術
親の言動に納得がいかないときでも、「でも」「そうじゃなくて」と即座に否定するのは避けましょう。
代わりに取り組みたいのは、相手の言葉をそのまま繰り返したり、「そう思ったんだね」と相槌を打ったりして、まずは気持ちを受け止めることです(アクティブリスニング(傾聴))。
人間は自分の感情を否定されずに受け入れてもらえると、安心して心を開きやすくなります。
たとえ事実が間違っていたとしても、「あなたにはそう見えているんですね」と理解を示す姿勢を見せることが大切です。
相手の感情をクールダウンさせることで、その後の提案にも耳を傾けてもらいやすくなります。
お願いベースで動いてもらう誘導法
親に何か行動を改めてほしいときは、上から目線で指示するのではなく、「下からお願いする」というスタイルが効果的です。
「片付けてよ」と命令する代わりに、「ここが散らかっていると転びそうで怖いから、一緒に片付けてもらえると助かるな」と伝えてみましょう。
これを心理学では、自分を主語にして気持ちを伝える手法と呼びます(アイメッセージ)。
人は誰かの役に立っていると感じることで、自尊心が満たされます。
指示されると反発したくなることでも、頼りにされていると感じれば、自分から協力しようという気持ちが湧いてくるものです。
イライラをやり過ごす距離の取り方
どれだけテクニックを駆使しても、やはり感情がぶつかり合ってイライラしてしまうことはあります。
そんなときは無理に会話を続けず、いったんその場から離れるのが有効です。
トイレに行くふりをしたり、お茶を入れに行ったりして、物理的な距離を取りましょう。
数分間でも一人になって深呼吸することで、冷静さを取り戻すことができます。
日常のサポートは長期戦になるため、すべてを完璧にこなそうとせず、時には休むことも必要です。
まとめ
高齢の親とのコミュニケーションは、価値観やペースの違いからストレスを感じやすいものです。
しかし、親の心身の変化を理解し、正しいことよりも相手の気持ちやプライドを優先することで、無用な衝突を避けることができます。
「別の生き物」として親を尊重し、適度な距離感を保ちながら、お互いが穏やかに過ごせる関係を築いていきましょう。
